夏休みの脱炭素テクノロジー体験 -「ZET-campus」レポート-
電気を使わずに緑色の光を放つ盆栽、廃棄された衣料繊維から生まれるキーホルダー、土を使わずに育つ野菜——。
ZET-BASE KYOTOでは、2026年7月29日(水)と8月5日(水)の2日間、小中学生や高校生を対象とした「ZET-campus」が開催されました。
ZET-campusとは
ZET-campusは、「ZET-valley構想」の実現に向けて2026年度から新たに始まった連続講座です。日常生活の中に脱炭素テクノロジーを取り入れていくことを目指し、住民や企業、大学、若者など、さまざまな立場の人たちとともに、脱炭素の未来のまちづくりについて学び、実際に体験できる場として企画されました。
小中学生を主な対象とした脱炭素テクノロジー体験イベント
7月29日、小中学生を主な対象に、脱炭素テクノロジーを身近に感じ、実際に体験できるイベントを開催しました。
会場には、脱炭素に関わる企業8社と、地元の京都府立桂高等学校が出展。それぞれのブースでは、実際に技術に触れられる「体験ブース」と、出展者の取り組みや技術を紹介する「展示ブース」を設け、参加した子どもたちに向けてワークショップを実施しました。
普段の生活ではなかなか触れる機会のない脱炭素テクノロジーも、実際に見て、触れて、体験することで、より身近なものとして感じられます。
この日、イベントに出展したのは、次の9つのブースです。
出展企業と出展内容
| 株式会社LEP | 光る盆栽の体験 |
| 株式会社colourloop | 廃棄繊維の素材を活用したキーホルダー作り |
| 株式会社京都銀行 | 太陽光パネル、EVなどの見学 |
| 株式会社GCJ | 土を使わない植物栽培の種まき、収穫 |
| 株式会社Seed Bank | 顕微鏡を使った微細藻類の観察 |
| 株式会社七十二候 | ユズの未利用部分を活用したアップサイクルの観察 |
| 株式会社TSK | 小松菜の苗の植え付け |
| 未来食研究開発センター株式会社 | 籾すり体験、矮性イネの観察 |
| 京都府立桂高等学校 | 京野菜キーホルダー作り、京野菜ポストカードづくり |
各ブースでは、出展者の皆様がクイズなどを交えながら事業内容や取り組みについてわかりやすく説明。参加者の理解が深まったところで、それぞれが用意した体験プログラムに実際に触れていただきました。

電気を使わず光る盆栽と出会う(株式会社LEP)
闇の中で、盆栽が静かに光っている。電源はどこにもない——そんな光景が、株式会社LEPのブースには広がっていました。
会場に展示されていたのは、電気を使わずに自ら緑色の光を放つ盆栽です。2025年大阪・関西万博でも注目を集めたバイオテクノロジーで、植物そのものが光源になるというアイデアは、「光をつくるには電気がいる」という私たちの当たり前の感覚を静かに揺さぶります。
ブースでは、発光の仕組みや今後の活用展望について解説。参加者は実際に光る盆栽を間近で観察しながら、どのような技術が光を生み出しているのか、そしてこれから暮らしの中でどのように活かされていくのかに耳を傾けました。
電気に頼らない光のかたちに触れることは、私たちが普段当たり前に使っているエネルギーについて、あらためて考えるきっかけにもなりました。

廃棄繊維から、世界に一つだけのキーホルダーへ(株式会社colourloop)
ハサミを入れ、糸を通し、組み合わせていく。手元にあるのは、本来なら捨てられるはずだった衣料繊維です。
株式会社colourloopのブースで行われたのは、廃棄衣料繊維を活用したキーホルダーづくり。ファッション産業では、製造の過程や売れ残りなどによって、多くの繊維が廃棄されているのが実情です。今回のワークショップでは、そうした行き場を失った素材に、新しい役割を与える体験ができました。
参加者は色とりどりの廃棄繊維の中からお気に入りの一枚を選び、世界に一つだけのキーホルダーを制作。完成した作品をさっそくバッグに付けて、笑顔を見せる子どもたちの姿があちこちで見られました。
「捨てるもの」が「持ち歩きたいもの」に変わる瞬間に立ち会うことは、資源循環というテーマを、頭ではなく手の感覚で理解する機会になったようです。

土を使わずに野菜を育てる(株式会社GCJ)
土がなくても、野菜は育つ——そう聞いて、驚いた参加者も多かったのではないでしょうか。
株式会社GCJのブースで紹介されたのは、セラミック技術を活用した土を使わない植物栽培です。担当者からは栽培の仕組みや環境への配慮について説明があり、参加者はまず種まきを体験し、すでに育てられていた野菜の収穫にも挑戦しました。
土に触れる代わりにセラミック素材へ手を伸ばすというこれまでにない栽培体験に、驚きの声があがる場面も。植物を育てる楽しさと、新しい技術の可能性を同時に味わえるブースとなりました。

顕微鏡の先に広がる、微細藻類の世界(株式会社Seed Bank)
レンズの向こうに広がっていたのは、肉眼では見えない小さな生き物たちの世界でした。
株式会社Seed Bankのブースでは、顕微鏡を使った微細藻類の観察を実施。微細藻類は、水の中に暮らす小さな生き物で、光合成をしながら成長します。ふだんの生活の中では、その存在を意識する機会はほとんどありません。
参加者は顕微鏡をのぞき込みながら、種類によって異なる形や動きを見せる微細藻類を観察。担当者からクイズを交えた解説を受けながら、それらが環境保全や生態系の維持にどのように関わっているのかを学びました。
目には見えない小さな存在が環境を支える一端を担っているという事実は、参加者にとって新鮮な驚きだったようです。

捨てられるはずだったユズが、シロップに(株式会社七十二候)
皮も、種も、本来なら捨てられるはずだった部分。それが、一杯のシロップとしてグラスに注がれました。
株式会社七十二候のブースで振る舞われたのは、ユズの未利用部分を活用した京柚子シロップです。ユズは果汁を搾ったあとの皮や種などが廃棄されることも多く、食品ロスの一因ともなっています。同社はそうした「使われない部分」に着目し、アップサイクルによって新たな商品価値を生み出しています。
参加者はシロップを試飲しながらその爽やかな香りと味わいを楽しむとともに、担当者からアップサイクルの仕組みについて説明を受けました。
「捨てるはずだったものが、こんなにおいしくなるんだ」という驚きは、食品ロス削減や持続可能な社会づくりについて考えるきっかけになったようです。

バイオスティミュラントで育てる、小松菜の苗(株式会社TSK)
苗を土に植える、その何気ない作業の裏側には、作物の生育を後押しする技術が隠れていました。
株式会社TSKのブースで体験できたのは、実際に市場でも販売されているバイオスティミュラントの配合ペレットを使った小松菜の苗の植え付けです。バイオスティミュラントは、農薬や肥料とは異なるアプローチで作物本来の力を引き出し、生育を助ける資材として近年注目を集めています。
参加者は実際にペレットを手に取り、苗を植える工程を体験。担当者からは生育促進の仕組みや持続可能な農業に向けた技術の役割について説明があり、日々の食卓を支える農業の現場にこうした技術が静かに広がりつつあることを知る、貴重な機会となりました。

すり鉢でお米づくりをたどる(未来食研究開発センター株式会社)
すり鉢の中で籾をこすり合わせると、殻の下から白い玄米が姿を現す——参加者にとって、それは大変印象的な光景でした。
未来食研究開発センター株式会社のブースで行われたのは、すり鉢を使って籾(もみ)から玄米を取り出す籾すり体験と、矮性イネの観察です。普段口にしているお米が、どのような姿から、どのような工程を経て食卓に届くのか、実際に手を動かしながらたどることができました。
参加者は力加減を確かめながらすり鉢を回し、籾殻が取れていく様子を観察。あわせて展示されていた矮性イネにも興味津々の様子で見入っていました。
お米づくりの一場面を体験したことは、これからの食料生産や農業のあり方について考える、小さな入り口になったのではないでしょうか。

京野菜を題材にしたものづくり(京都府立桂高等学校)
はさみと接着剤を手に、参加者が向き合っていたのは、京都の伝統野菜をモチーフにした素材たちでした。
京都府立桂高等学校のブースでは、同校が進める研究活動の紹介とあわせて、京野菜を題材としたキーホルダーづくり・ポストカードづくりを実施。生徒の皆様から日頃の取り組みについて直接説明を受けながら、参加者は製作に取り組みました。
京野菜をモチーフにした作品を仕上げていく中で、参加者は京都の伝統野菜への親しみを深めるとともに、それらを研究し、次の世代へとつないでいこうとする高校生たちの姿にも触れることができました。

ZEB認証ビルを歩いて知る、省エネ・再エネ活用の現場(株式会社京都銀行)
歩くたびに、建物のあちこちに省エネや再エネ活用の工夫が見えてくる——株式会社京都銀行のブースで行われたのは、そんな発見に満ちた見学ツアーでした。
会場となっている京都フィナンシャルグループ MUKOUビルは、「ZEB」認証を取得している建物です。会場である「ZET-BASE KYOTO」自体が、その取り組みの実例のひとつでもあります。
参加者は建物内を巡りながら、断熱性を高めた壁面等やカーポートに設置された太陽光パネル、EV車・EVバイクなどを見学。ふだん目にする機会の少ない省エネ設備を間近で確認しながら、再エネの活用が、すでに自分たちの身近な建物の中で進んでいることを実感していきました。

手に取り、眺め、深まる理解
各出展者のポスターや製品などが並ぶ展示ブースでは、参加者が手に取ったり間近で眺めたりして、各企業の事業や取り組みへの理解を楽しく深めていく姿が見られました。



また当日は、京都府立向陽高等学校の探究学習の一環として、アントレプレナーシップラボに所属する生徒の皆様にもご参加いただきました。各社の体験ブースの運営補助を担っていただくとともに、スタートアップ企業との交流を通じて、企業の取り組みや起業家精神への理解を深めていただく機会にもなりました。
参加者からは、「さまざまな技術を知ることができた」「環境問題や食料問題について考えるきっかけとなった」「実際に使ってみたい」など、多くの感想が寄せられました。
出展企業の製品や技術の中には、すでに日常生活のさまざまな場面で活用されているものもあります。今回のイベントは、そうした技術の存在を来場者に知っていただく機会であると同時に、実際に体験していただくことで、脱炭素技術の社会実装や地域への導入促進にもつながる一歩になったのではないでしょうか。
高校生が現場で脱炭素の課題解決を考えるワークショップ
8月5日は、高校生を対象として、ZET-BASE KYOTOを飛び出し、工場見学とグループワークを通じて脱炭素の課題について考えるワークショップを開催。
当日は15名の高校生が参加し、久御山町にあるコカ・コーラ ボトラーズジャパン京都工場を訪問しました。
まずは映像を通してコカ・コーラの歴史を学んだ後、工場見学へ。これまでに発売されたコカ・コーラ社製品が並ぶトンネルを通り、実際に稼働している工場内を見学しました。

※コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社様の許可を得て撮影
見学では、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の社員の方から、飲料製品の製造タンクやペットボトルへの充填工程などについて、クイズを交えながらご説明いただきました。参加者は、普段目にする飲料製品がどのような工程を経て作られているのかを実際に見ながら、製造工程への理解を深めました。
工場見学の後は4チームに分かれてグループワークを実施。工場における脱炭素に関する課題を題材に、解決に向けたアイデアを考えました。

グループワークのテーマは「コカ・コーラ社製品の茶かす・コーヒーかすの課題を解決せよ!」
参加者には事前課題として、テーマについて各自で調べ、解決策を考えてきていただきました。グループワークでは、それぞれが事前に考えてきたアイデアを持ち寄り、4つのグループごとに一つのアイデアへとまとめていきます。
今回は初めて顔を合わせる参加者同士でのグループワークだったため、議論をどのように進めていくのかが一つのポイントでした。
各グループにはコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の社員の方にも1名ずつ加わっていただき、参加者同士で積極的に意見を交わしながら、アイデアを形にしていきました。会場には終始活発な声が飛び交い、にぎやかで活気のある雰囲気となりました。

グループワーク後、各チームから発表があり、茶かすやコーヒーかすをクッキーやパンにしたり、ネコ砂用の消臭剤にしたりするなど、さまざまなアイデアが出されました。
審査を担当したコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の社員の方からは、「過去にもいろいろなリサイクルのアイデアがありましたが、食品に活用するなど、高校生らしい柔軟な発想や説明を聞き、わたしたちにとっても学びの多い機会となりました」と、高校生ならではの視点に対する評価の言葉が寄せられました。
参加者からは、「慣れない人たちと慣れない課題に挑むことが新鮮でよい経験になりました」や「自分にはなかった考えや技術を学ぶことができて、とても有意義で楽しかったです」など、グループワークに対する前向きな感想を多くいただきました。
各グループの発表終了後、コカ・コーラ ボトラーズジャパン京都工場での実証試験を行っている京都大学発のスタートアップ ライノフラックス株式会社様から、茶かすやコーヒーかすを資源としてバイオマス発電を行う実証事業について説明がありました。

参加者からは、「今まで全然気にしたこともなかったけど、茶かす・コーヒーかすが問題となっていて、それを解決するために取り組まれていてすごいと思いました」や「大きな企業とスタートアップが協力することで、新しいアイデアや技術が実現できることがすごいと思いました」などの声が寄せられました。
グループワークで同じテーマに取り組んだからこそ、実際に課題解決に挑戦している企業のお話は、参加者にとってより深い学びにつながったようです。
今回のワークショップを通じて、脱炭素や資源循環への関心が高まった様子がうかがえました。これを機に、自ら学びを深めたり、課題解決に向けて挑戦したりするきっかけとなれば嬉しく思います。
脱炭素社会の実現に向けて
脱炭素という課題は一朝一夕に解決できるものではなく、多くの方々を巻き込んだ非常に長い期間の挑戦です。
今回、小中学生や高校生を対象として2つのイベントを開催したことを通じて、将来のまちづくりを担う世代に脱炭素について知っていただき、理解を深めていただく機会になりました。
今後も、幅広い世代に向けて脱炭素テクノロジーを発信し、体験できる機会をZET-BASE KYOTOから提供してまいります。
開催概要
脱炭素テクノロジー体験イベント
開催日:2026年7月29日(水)10:00〜17:30
会場:ZET-BASE KYOTO(京都府向日市寺戸町山縄手21番地1 京都フィナンシャルグループ MUKOUビル 3階)
主催:京都府
共催:ZET-BASE KYOTO(施設運営:株式会社ツクリエ)
現場を見て、考える 脱炭素テクノロジー視察ワークショップ
開催日:2026年8月5日(水)9:00〜13:30
会場:コカ・コーラ ボトラーズジャパン京都工場(京都府久世郡久御山町田井新荒見128)
主催:京都府
共催:コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社、ライノフラックス株式会社、ZET-BASE KYOTO(施設運営:株式会社ツクリエ)