2026年06月26日 イベントレポート

小さな稲が問いかける、未来の農業のかたち。-「未来のお米づくり」実証実験 田植え体験ワークショップ レポート-

小さな稲が問いかける、未来の農業のかたち。-「未来のお米づくり」実証実験 田植え体験ワークショップ レポート-

室内で、稲が育つ。

田んぼでも温室でもなく、オフィスビルの一室に並んだプランターの中で、小さな緑の芽が育ち始める——2026年6月13日(土)、ZET-BASE KYOTOにてそんな光景が生まれました。

「京のゆめ」という品種が生まれた背景

今回の主役となったのは、矮性イネ「京のゆめ」。通常の稲の半分以下の背丈で育ち、専用の栽培キットを使えば室内環境でも栽培できる品種です。

農業は長らく、広大な土地と安定した気候を前提とした営みでした。しかし気候変動による異常気象や、世界的な人口増加にともなう食料需給の逼迫が現実の問題となっているいま、その前提そのものが揺らぎ始めています。「どこでも、安定して食料をつくれるか」という課題は、研究室の中だけの話ではありません。

「京のゆめ」は、そうした時代のニーズにマッチした品種のひとつです。
背丈が低いため倒伏しにくく、限られたスペースでの栽培に向いています。植付から収穫までわずか3カ月で生育、一年に4回収穫できるため、安定的に生産できるメリットがあります。専用の栽培キットと適切な光・水・温度の管理があれば、田んぼを持たない都市部や屋内施設でも育てることができます。
将来的には、農地を持たない地域や、災害時の食料確保といった場面への応用も視野に入れた取り組みです。

本イベントは、京都府・ZET-BASE KYOTO・未来食研究開発センター株式会社の三者が連携して実施する栽培実証実験の一環として開催されました。STEP1「田植え(植え付け)」、STEP2「観察」、STEP3「収穫&試食」という3段階のプログラムのうち、今回はその最初のステップにあたります。

<ZET-BASE KYOTOで開催された「未来のお米づくり」実証実験。田植え体験ワークショップには、親子連れをはじめ多くの参加者が集まりました。>

「プランター6個で、茶碗1杯分」——数字が語る、米づくりの実感

ワークショップの前半では、未来食研究開発センター株式会社の代表取締役 増村威宏様・山本真生様から「京のゆめ」の特性と、室内栽培に取り組む意義についての解説が行われました。

担当者は一つひとつの説明に、「京のゆめ」への思いをにじませながら話を進めました。稲の花が開いている時間がわずか2時間程度だという話になると、「これが『かわいいポイント』の1つなんです」と顔をほころばせました。その言葉が、この品種に向ける愛情をそのまま表していました。

通常の稲作と今回の栽培方法の違いについての説明も、参加者にとって発見の連続でした。「一般的な稲の半分以下の背丈で育つ品種が存在すること」、そして「プランター6個分を育ててようやく茶碗1杯のご飯になる」という収量の現実——どちらも「初めて知った」という声が相次ぎました。普段、スーパーで当たり前のように手にするお米が、どれだけの手間と環境条件のうえに成り立っているか。そうした実感が、小さな数字を通じて参加者に届いていました。

クイズ形式を交えた解説の時間について、参加者からは「体験型であり、その前のお話も勉強になり面白かった」「稲の話を聞けて、貴重な体験ができた」といった感想が寄せられました。

<「京のゆめ」の特徴や室内栽培実証の背景について、未来食研究開発センター様から解説を行う増村様(左)山本様(右)>

土から始める、米づくり

後半は実践の時間です。

参加者はまず2種類の土を混ぜ合わせ、水を加えながら、稲が育つための土壌をつくるところから始めました。種もみをただ植えるのではなく、植物が根を張るための「環境」そのものを手でつくるプロセスから体験する構成になっています。

土壌を整えたあと、「京のゆめ」の種もみを一粒一粒植え付けていきます。当日は、土に触れることに強い関心を示し、時間いっぱいまで夢中で手を動かし続けるお子さんの姿も見られました。「室内で子どもと土に触れるワークショップはありがたかった」「普段見ている稲作と違うものが見られ、土いじりが楽しかった」といった声も寄せられました。

<2種類の土を混ぜ合わせ、稲が育つための土壌をつくっていきます。>
<「京のゆめ」の種もみを、一粒一粒丁寧に植え付けました。>
<親子で土に触れ、米づくりの始まりを体感する時間となりました。>

“農場”に名前をつける

田植え(植え付け)が終わると、参加者はそれぞれのプランターにそれぞれの”農場”の名前を書き込み、稲へのメッセージを添えました。名前をつけ、言葉を贈ることで、これから成長していく「京のゆめ」を「見守る」気持ちが生まれます。

最後の集合写真では、「京のゆめ」のキャラクター「かわいイネちゃん」のパネルを持って子どもたちが集まり、笑顔があふれました。

<自分たちのプランターに”農場”の名前と、稲への応援メッセージを記入しました。>
<「ZET-campus」と「かわいイネちゃん」のパネルを持って、参加者全員で記念撮影。>

実証フィールドとしてのZET-BASE KYOTO

ZET-BASE KYOTOは、脱炭素関連のスタートアップ・研究者・企業・行政・地域が交わる共創拠点です。今回の「京のゆめ」栽培実証は、この施設を「技術や新たな挑戦を地域とともに試す実証フィールド」として活用する実践の一つです。最先端の技術や研究を、専門家だけのものにとどめず、子どもから大人まで幅広い人々が体験・理解できる形で開いていくこと——それがZET-BASE KYOTOが目指す共創のかたちでもあります。

今回植え付けられた「京のゆめ」は、そのままZET-BASE KYOTO内で育てられ、来館者が成長の様子を観察できる形で展示されます。施設を訪れるたびに稲の成長を確認できる仕組みは、実証実験を「見せる」だけでなく、来館者自身がその過程に関わり続けられる体験として設計されています。育成の記録は、公式Instagramでも随時発信していく予定です。

「今回の実験が成功して、稲作の新たな道が開けることを楽しみにしている」「自宅でも作れそうだと思った。子どもの食育にも良い」——アンケートに残された言葉には、一つのワークショップを超えた広がりへの期待が込められていました。室内で稲を育てるという小さな実証が、食や農業の未来について考えるきっかけとして、確かに届いていたことがうかがえます。

次回のステップは、2026年10月31日(土)に予定している「収穫体験&試食ワークショップ」。育てて、観察して、収穫して、食べる。その一連の体験を通じて、「未来のお米づくり」が問いかけるものに、参加者とともに向き合っていきます。

<植え付けられた「京のゆめ」は、ZET-BASE KYOTO内で栽培・展示中。成長の記録は公式Instagramでも発信していきます。>

開催概要

イベント名:「未来のお米づくり」実証実験 —小さな稲「京のゆめ」育てて、収穫して、たべてみる。—
開催日:2026年6月13日(土)13:30〜15:30
会場:ZET-BASE KYOTO(京都府向日市寺戸町山縄手21番地1 京都フィナンシャルグループ MUKOUビル 3階)
主催:京都府
共催:ZET-BASE KYOTO(施設運営:株式会社ツクリエ)、未来食研究開発センター株式会社
今後の予定:成長観察(2026年6月15日〜収穫まで)、収穫体験&試食ワークショップ(2026年10月31日予定)